はつこい文庫

ゆるいブログです

夏の思い出

ビー玉のついたヘアゴ

揺れる先をいつも見ていた

黙ってお揃いのものを買ったけど、

僕は君にはなれない

そんなこと最初から分かっていた

 

真っ白なワンピースから覗いた

か弱いサテンリボンの先を僕は知らない

いつだって君は僕の手の中をすり抜ける

今日も、出会った日も、ずっと

 

こっそりと交換した手紙、

大事にしているのはきっと僕だけだろう

一緒に行った喫茶店、今も通っているのは

僕だけだろう

夏のあの日、さらりとした

君の肌の感触を僕は未だに覚えている

 

君は、カフェラテの氷が溶ける頃には

僕に興味をなくしてる

頬杖をついて、外を見て、そして静かに

まるで僕なんか側にいないみたいに

目を瞑る

 

いつだったか、君の後ろ姿の写真を

撮ったことがあった

君はシャッター音もさせてないのに

僕の方を振り向いて、

いけないことしたでしょ、

って笑った

 

初恋の味が樽様だなんて誰が決めたのだろう

僕の初恋の味は、君が舐めていた

抹茶のキャンディだった

甘くて最後はほろ苦い、

チープなパッケージに

その辺で手に入るけど

あげた人に意味があるもの

 

君とプールサイドから見た校舎、夏のぬるい風

 

ぜんぶぜんぶ、閉じ込めたいって言ったら

怒るかな

微かな夏の記憶、忘れたくないのに

君みたいにいつのまにか居なくなってしまう

 

初恋の味、もう思い出せないや

同じものをいくら食べても

あの日の味にはならない

 

パッケージもあの頃とは違って、

妙に酒落たものになってしまって、

 

ああ

すり抜けていく夏の思い出